「乳がん」って?早期発見のためにできることとは?
「乳がん」とは
「乳がん」とはどのような病気なのでしょうか。
「乳がん」は乳腺という組織にできるがんです。多くは、乳管から発生しますが、一部は小葉から発生します。今、乳がんになる人は増えていて、9人に1人が乳がんになる時代といわれています。
そんなに多いのですね。驚きました。
年々乳がんの患者数は増えています。患者数は30代から増えていき、40代から60 代後半がピークとなります。現在、女性がかかるがんの第1位です。
9人に1人と割合が増えた原因としては、どのようなことが考えられているのでしょうか。
まだはっきりしたことはわかっていませんが、さまざまな要因が考えられます。一つには生活スタイルの欧米化に伴い徐々に増えてきたともいわれています。また、乳がんの発生、増殖には女性ホルモンであるエストロゲンが重要な働きをしています。そのため、初潮年齢が早く、閉経年齢が遅くなったり、出産や授乳を経験しない方が増えたりしていることもホルモンの影響を受けやすく、がんになりやすいと考え られています。
昔とくらべて月経回数が増えているのですね。
はい。たとえば大正の生まれの方は子どもを5人、6人と産んでいる場合が多く、生理が一生のうちに50回ぐらいしかなかったので、女性がエストロゲンにさらされている時間が短かったのです。
現代では出産しても1人か2人だったり、子どもを産まない方も増えているので、現代の 女性は一生のうちに平均450回ほど生理を経験しているといわれています。それだけ常にエストロゲンにさらされているので、その状況が乳がんの方が増える原因のひとつになっているとも考えられます。
「乳がん」の症状
乳がんになるとどのような症状が見られるのでしょうか?
乳房にできる硬いしこりが代表的な症状です。自分で気付くことができる症状としては、しこりが ある、乳房の一部にえくぼのようにくぼんでいる部分がある、乳頭が変形している、皮膚がひきつっているような変化が見られる、などがあります。また、乳頭をしぼったときに、血液が混ざったような異常な分泌物が出る場合もあります。
最も変化に気づきやすいのは入浴のタイミングかと思います。お風呂に入って、体を洗うときに乳房をよく触って、しこりのようなものがないかをチェックいただくことが大切です。
「乳がん」のセルフチェックの重要性
乳がんを早期発見するにはどういったことを意識すると良いのでしょうか?
乳がんを早く見つけるには、日ごろから乳房を意識する生活習慣 (ブレスト・アウェアネス) が大切です。ポイントとしては、①普段から自分の乳房の状態を知っておくこと、②乳房をみて触って感じる、③乳房のいつもと違う変化に気づく、④変化に気づいたら検診機関ではなく医療機関(乳腺外科・外科)を受診すること、⑤乳がん検診を受けることが挙げられます。
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なるほど。普段からセルフチェックを行なって、変化に気づけるようにしておくことが大切なのですね。
「乳がん」のしこりの特徴は?
くぼみやしこりがある場合は、病気が結構進んでいるということなのでしょうか。
しこりが必ずしも「がん」ということではありません。たとえば乳腺線維腺腫 (線維腫) という良性腫瘍もよくありますし、乳房内に水が溜まる乳腺嚢胞というものもあります。しこりがあるからがんだと決めつけずに、まずは病院に行って検査してもらってください。
ときどき怖くて病院に行けなかったと言う方もいるのですが、やはり早く受診することが重要です。また、気になる症状がある場合には検診の予約を入れていても検診の日を待つのではなくて、早めに 乳腺外科・外科で診てもらうようにしていただきたいです。
乳がんのしこりは、自分で触ると分かるくらい違和感があるのでしょうか?
大きさやできている場所などにもよると思います。初期の段階であれば全然分からないかもしれませんが、ある程度の大きさになれば、ご自身でも違和感に気づく可能性があります。
そうなのですね。感触はどのような感じなのでしょうか?
よく「こんにゃくの下に大豆などを入れて触った感じ」と例えられますね。ただ、特に若い方だと乳腺が多くて乳房全体が張っているので、どこが乳腺でどこがしこりかわからないという声もよく聞きます。生理が終わったあとがもっとも乳房が張ってないタイミングなので、そのような時期に自己触診してもらうとよいと思います。
「乳がん」は何科を受診するの?
受診する病院はかかりつけの産婦人科でいいのでしょうか?
乳がんが女性に多い病気なので産婦人科を受診する方もいらっしゃるのですが、乳房のしこりや異常に関しては乳腺外科・外科の領域になります。「乳腺外科・外科」を受診してください。
乳腺外科なのですね!知りませんでした。
はい。産後の乳腺炎などのトラブルは産婦人科で診察することが多いので意外に思われる方も多いのですが、乳房の異常に関しては、乳腺外科・外科を受診してください。
「乳がん」の治療方法
乳がんにはどのような治療方法があるのでしょうか。
がんの進行度や種類、どのような抗がん剤が効くかなどよって治療方法が異なるので、一概には言えません。ただ、非常に初期のがんであれば部分切除などで済む場合もあります。乳がんは、小さいうちに見つけると、治る可能性が高い病気です。早期に見つかった場合、90%以上は治ります。定期的に乳がん検診を受けて、早期発見・早期治療に努めることが重要です。
「乳がん」の予防方法
乳がんはワクチンで予防できないのでしょうか?
乳がん予防のワクチンはありません。
そうなのですね。検診でしか気付きにくいこともある、というのは少し怖いですね。
はい。初期のがんをご自分でみつけることは難しいからこそ、検診が大切です。
乳がん検診の頻度としては、2年に1回で十分なのでしょうか。
いま厚生労働省が提示している対策型検診では「40歳以上の方は2年に1度マンモグラフィを受けましょう」ということになっていますので、40歳を超えたら少なくとも2年に1回は必ず検査を受けていただきたいです。 一方、30代ぐらいから乳がんが増えてくるので「心配だから検診を受けたい」という方ももちろんいらっしゃると思います。そのような方は40歳未満でも任意型検診として、毎年乳房エコー検査 (乳房超音波検査) などを受けた方が安心だと思います。
「乳がん」の検査
乳がんを発見しやすい検査はマンモグラフィと乳房エコーの検査なのでしょうか?
それぞれの検査により見つけやすい病変に違いがありますので、年齢にもよりますが、マンモグラフィと乳房エコー検査の両方を受けておくと安心です。
そうなのですね。年齢によって受けておいたほうがいい検査は変わるのでしょうか?
40歳未満の方は乳房エコー検査、40歳以上の方にはマンモグラフィに加えて、乳房エコー検査もすすめています。若い方では乳腺が多く、マンモグラフィを撮影したときに乳腺としこりが重なって、しこりを見つけにくい可能性があるため、乳房エコー検査が推奨されます。
特に「乳がん」に注意が必要な人
特に乳がんに注意した方が良いのはどんな方でしょうか?
乳がんの患者数は、30代から徐々に増えていき、40代以上になると非常に多くなります。また、血縁者に乳がんや卵巣がんになった方がいる場合には特にリスクがあると考えて、定期的に乳がん検診を受けていただくことが大切ですね。
ほかにも注意した方がよいことはありますか?
更年期障害の治療目的でホルモン補充療法を行って いる方、低用量ピルの服用をしている方も、定期的に乳がん検診 を受けておくと安心です。
そうなのですね。鈴木先生、ありがとうございました!
まとめ
この記事では、鈴木先生に「乳がん」についてお話しいただきました。ポイントをまとめると下記の通りです。
- 乳がんは乳腺という組織にできるがん。
- 乳がんの患者数は年々増加しており、9人に1人が乳がんになる時代といわれている。現在、女性がかかるがんの第1位。
- 乳がん患者数は30代から増えていき、40代から60代後半がピークに。
- 乳がんの代表的な症状は、乳房にできる硬いしこり。乳房の一部にえくぼのようにくぼんでいる部分がある、乳頭が変形している、皮膚がひきつっているような変化が 見られる、などの症状もある。
- 乳がん早期発見には、日ごろから乳房を意識する生活習慣 (ブレスト・アウェアネス) が大切。普段からセルフチェックを行なって、変化に気づけるように意識する。
- 乳がんのしこりの感覚は「こんにゃくの下に大豆などを入れて触った感じ」と例えられることが多い。
- 40歳を超えたら少なくとも2年に1回は必ず検査を受けることが乳がんの早期発見・早期治療につながる。ただし異変を感じたら次の検診を待たず「乳腺外科・外科」を受診することが大切。
年々患者数が増えている「乳がん」は女性が特に気をつけたい病気のひとつです。普段からセルフチェックや定期的な検診を心がけ、病気の早期発見に努めましょう。
1996年3月浜松医科大学卒業
1996年5月浜松医科大学医学部付属病院産婦人科
その後、大学関連病院勤務を経て
2003年3月浜松医科大学大学院修了
2003年4月米国カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部がんセンター
2006年4月聖隷健康診断センター
2010年4月聖隷健康サポートセンターShizuoka 所長 現在に至る
2016年4月静岡県立大学客員教授