「乳がん検診」とは?2年に1度で大丈夫?
乳がんとは
乳がんとはどのような病気なのでしょうか。
「乳がん」は、乳腺と いう組織にできるがんです。多くは、乳管から発生しますが、一部は小葉から発生します。乳がんの患者数は年々増えていて、2019年のデータでは生涯のうち9人に1人が乳がんになるといわれています。発症する方は30代から増え40代~60代後半がピークです。
「乳がん検診」の種類
乳がん検診には、どのような検査があるのでしょうか?
乳がん検診で行う検査には、「マンモグ ラフィ」や「乳房エコー検査 (乳房超音波検査)」、「3Dマンモグラフィ (乳房トモシンセシス)」 などの検査があります。以前は医師が乳房を視て触って確認する「視触診」も行われていましたが、最近は乳がんの早期発見のためには有効性が確立されていないため、検診では実施されない傾向にあります。
さまざまな検査があるのですね。まず「マンモグラフィ」とはどのようなものでしょうか?
マンモグラフィは、乳房専用のレントゲン検査です。板のようなもので乳房をはさんでできるだけ薄く平らにして、レントゲン撮影を行います。しこりになる前の石灰化した小さな 乳がんを発見するのにも有用な検査です。
マンモグラフィは「痛くて苦手…」という方も多いですよね。
そうですね。特に若い方は乳腺が多いため、乳腺が圧迫されると痛みを感じると思います。また、生理前で胸が張っているタイミングでこの検査をするとなるとかなり痛い場合もあります。
どうして乳房を薄くしなくてはいけないのでしょうか?
薄くすることで乳腺の重なりをできるだけ少なくし、なるべく多くの部分をもれなくチェックできる、というのが理由のひとつです。また、薄くすればするほど少ない放射線量でマンモグラフィが撮れるので、被ばく量を抑えることにもつながります。
なるほど。それは痛くても我慢しなくてはいけませんね。次に「乳房エコー検査」とはどのような検査でしょうか?
乳房エコー検査は、仰向けになった状態でプローブ (超音波を発信する機器) をあてていき、乳房内の病変やしこりなどを確認する検査です。乳房にジェルを塗って、その上にプローブをすべらせるようにして検査を行い、モニターで乳房内部を確認していきます。こちらの検査では通常痛みはなく、放射線の被曝もありません。
どちらの検査も受けた方がいいのでしょうか?
はい、両方受けておくと安心です。がんの種類や場所によって、マンモグラフィの方が見つけやすい場合も、乳房エコー検査の方が見つけやすい場合もありますので、両方の検査を受けておくと安心です。また、若い方(40歳未満)の場合は乳腺量が多いため、マンモグラフィではがんを発見しにくい場合もあることから、乳房エコー検査の方をおすすめしています。
「乳がん検診」とは
「乳がん検診」ではどのような検査を行うのでしょうか?
自治体などが実施する対策型検診では40歳以上の女性を対象に2年に1度、「マンモグラフィ」を行っています。自治体によってはまれに対象年齢が30歳以上だったり、「乳房エコー検査」も行われていたりする場合もあります。お住まいの自治体のホームページで調べてみたり、所属の健康保険組合や勤務先に検診の補助制度について確認してみるとよいでしょう。
「乳がん検診」は2年に1回で大丈夫?
「乳がん検診」は、2年に1回受ければ安心なのでしょうか?
まず検診の種類と考え方を確認しましょう。検診には「対策型検診」と「任意型検診」の2種類があります。自治体が行なっている検診は対策型検診というもので、各個人のリスクではなく、集団全体の ”死亡率” を下げることを目的として、受診間隔も検査内容も定められています。
一方、自分の健康リスクが心配だから検診を受けたいという場合もあると思います。自分から検査を受ける場合はどんな検査項目も自由に選択できます。この検査を「任意型検診」と言います。人間ドックが代表的な例ですね。
なるほど。検診には2種類の形があるのですね。
いま厚生労働省が提示している対策型検診では「40歳以上の方は2年に1度マンモグラフィを受けましょう」ということになっていますので、40歳を超えたら少なくとも2年に1回は必ず検査を受けていただきたいです。 一方、30代から乳がんが増えてくるので「心配だから検診を受けたい」という方ももちろんいらっしゃると思います。そのような方は40歳未満でも任意型検診として、毎年乳房エコー検査を受けると安心だと思います。
「乳がん検診」はどこで受けられる?
乳がんの検診はどこで受けられるのでしょうか?
乳がん検診は、健診施設、乳腺外科・外科などの医療機関などで受けることができますよ。
婦人科では受けることができないのでしょうか?
一般的には婦人科では、乳房の診察や検査は行っていませんが、実施している婦人科もありますので、各医療機関に問い合わせてみるとよいでしょう。通常、総合病院の乳腺外科・外科は、検診ではなく、何らかの症状がある方や、検診後の精密検査や治療目的の方を対象としていますので、その点にも注意が必要です。総合病院では検診部門を併設しているところもあります。
「乳がん検診」の費用は?
乳がん検診の費用はどのくらいなのでしょうか?
自治体が行なっている対策型検診の「乳がん検診」の場合は、少額の自己負担となっていることが多いです。お住まいの自治体のホームページなどで確認してみましょう。また勤 務先によっては健康保険組合の補助がある場合もありますので、担当窓口に聞いてみるとよいでしょう。
自主的に行う任意型検診の場合、価格はどのくらいなのでしょうか?
医療機関によって異なりますが、私の施設では、マンモグラフィで3,850円(1方向)、5500円(2方向)、乳房エコー検査は3,850円で行なっています。
検診以外で検査を受けた方がいいのはどんな時?
自治体が行なっている「乳がん検診」以外で、乳がん検査を受けた方がよいのはどんな時でしょうか?
もちろん「乳がん検診」以外にも、乳房の部分にしこりを感じるといった場合には検診のタイミングを待たずに、病院を受診して検査をしていただきたいです。症状があれば、保険診療で検査が可能です。
20〜30代でも乳がん検査は受けた方がいいのでしょうか ?
一般的には30代から検査をおすすめすることが多いですね。血縁者に乳がんの方がいる場合などは、20代から検査をおすすめすることもあります。
妊娠中の乳がん検診は可能?
妊娠中にも乳がんになることはあるのでしょうか?
はい。妊娠中は乳腺が発達するため、乳がんが普段よりも見つかりにくい傾向があり、正しい結果が得られないこともあります。また、赤ちゃんに意識が向いていてあまり乳房の変化に気づきにくいということもあり、発見が遅れてしまう場合もあります。
妊娠中の方の場合、乳がん検診はできるのでしょうか?
妊娠中の方の場合、胎児に影響を与える可能性があるため基本的にはマンモグラフィ検診は受けることができません。乳房エコーは検査による被ばくがないため、受けることが可能です。(医療機関により対応が異なる場合もありますので、事前に妊娠中の乳がん検診については各医療機関にお問合せください。)
そうなのですね!鈴木先生、ありがとうございました。
まとめ
この記事では、鈴木先生に「乳がん検診」についてお話しいただきました。ポイントをまとめると下記の通りです。
- 乳がんは乳腺という組織にできるがん。患者数は年々増加しており、9人に1人が乳がんになる時代といわれている。現在、女性がかかるがんの第1位。
- 乳がん患者数は30代から増えていき、40代から60代後半がピークに。
- 乳がん検診には「マンモグラフィ」「乳房エコー検査 (乳房超音波検査)」 などの検査がある。
- 「マンモグラフィ」は、乳房専用のレントゲン検査。板のようなもので乳房をはさみレントゲン撮影を行う。しこりになる前の石灰化した小さな乳がんを発見するのにも有用。
- 「乳房エコー検査」は、仰向けになった状態でプローブ (超音波を発信する機器) をあてていき、乳房内の病変やしこりなどを確認する検査。
- 年齢によって、適した検査が異なるが、40歳以上ではマンモグラフィ、乳房エコー検査のどちらも受けておくと安心。
- 多くの自治体では対策型検診として40歳以上の女性を対象に2年に1度、「マンモグラフィ検査」の補助制度がある。
- 乳がん検診は、検診施設、乳腺外科・外科などの医療機関などで受けられる。 婦人科では一般的には、乳房の診察や検査は行っていない。
年々患者数が増えている「乳がん」。9人に1人がかかる女性が特に気をつけたい病気のひとつです。普段からセルフチェックを行い、定期的な検診を受けることで病気の早期発見・早期治療を目指しましょう。
1996年3月浜松医科大学卒業
1996年5月浜松医科大学医学部付属病院産婦人科
その後、大学関連病院勤務を経て
2003年3月浜松医科大学大学院修了
2003年4月米国カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部がんセンター
2006年4月聖隷健康診断センター
2010年4月聖隷健康サポートセンターShizuoka 所長 現在に至る
2016年4月静岡県立大学客員教授