「性感染症(性病)」って何?どんな症状があるの?
「性感染症(性病)」とは
「性感染症(性病)」とはどのようなものなのでしょうか?
「性感染症」とは “性行為で感染する病気” の総称です。原因となる病原体が感染した人の精液や腟分泌液や口の粘膜を介して、性行為の際に伝染します。いろいろな種類の病気があるので、今回は代表的なもの、女性の方が特に気をつけたいものをいくつか紹介します。
ありがとうございます。まずは「梅毒」についてお聞きしたいです。
「梅毒」とは
「梅毒」はここ10年ほどで増えている性感染症です。いろいろ症状があるのですが、初期症状としては感染した場所にできものやしこりができます。その後、数ヶ月、数年かけて皮膚、血管、神経へ病気が進行していくのですが、症状が出るまでに数週間かかる上に一度症状が落ち着くこともあり、感染した本人も気づきにくい病気です。感染を知らずに性交渉を介して、多くの人に広がっている現状があります。
そうなのですね…。「梅毒」のほかに注意すべき性感染症はありますか?
女性が特に注意していただきたいのが、「クラミジア」と「淋菌」です。
「クラミジア」とは
「クラミジア」はどのような病気なのでしょうか?
「クラミジア」は日本で1番感染者が多い性感染症です。主な症状として、女性側はおりものの量が増えたり、においがきつくなったり、生理痛のような痛みが出たりという場合が多いです。また、無症状のこともあります。
「淋菌」とは
「淋菌」はどのような病気なのでしょうか?
「淋菌」は女性の方はおりものの色が変化したり腹痛を起こしたりすることもありますが、無症状のことも多いです。どちらも感染に気づかないまま、子宮の入り口から徐々に卵巣や卵管、上腹部の方まで病気が進行していきます。
「クラミジア」と「淋菌」は不妊症の原因になる
非常にやっかいなのが、「クラミジア」と「淋菌」は知らない間に “不妊症” の原因になります。感染によって卵管が癒着してしまい、卵子がうまく移動できなくなることで、妊娠しづらくなったり、妊娠しても異所性妊娠を引き起こしたりという問題があります。
一度感染すると将来に渡って影響するのはこわいですね。「クラミジア」や「淋菌」はどのように検査するのでしょうか?
子宮の入り口あたりをこすって、PCR検査をすると感染しているかわかります。
「性感染症」の予防策
これらの性感染症の予防策はあるのでしょうか?
まず性交渉の際にはコンドームを使用することです。また、不特定多数との性交渉は避け、もし性感染症が疑われる場合や、かかってしまった場合にはパートナーに伝えることも重要です。性別によって症状に違いがあるので、パートナー側に症状が出ていない可能性もあります。一方だけが治療して完治しても、もう一方は病原体を持ったままだと、性交渉の際に再度感染してしまうこともよくあります。双方が治療を行い、完治させることが大切です。
「性感染症」の治療方法
「梅毒」「クラミジア」「淋菌」はどのよ うに治療するのでしょうか?
「クラミジア」は内服薬を一度服用、「淋菌」は点滴を一度投与すれば治ることが多いです。基本的には外来で治療しますが、腹痛などの症状が強い場合は入院して点滴治療をすることもあります。「梅毒」は何週間もかけて薬の投与を行っての治療になります。
そうなのですね。早めに治療できればすぐに完治できる病気もあるのですね。これまでのお話を聞いていると、性感染症に感染した場合、女性側は初期症状として “おりもの” に異変が現れる場合が多いのでしょうか?
そうですね。無症状の場合も多いですが、症状がある場合はおりものに出たり、生理痛のような痛みが出たりします。
なるほど、いろいろな症状があるのですね。
「カンジダ」とは
また、性感染症ではありませんがおりものに変化が出る「カンジダ」という性器の病気もあります。
「カンジダ」はどのような病気なのでしょうか?
「カンジダ」は、カビの一種が原因で引き起こされる性感染症です。症状としてはチーズのようなポロポロとしたおりものが出たり、デリケートゾーンのかゆみが起こったりします。この菌は性行為でも感染しますが、日常的にその人自身が持っている菌(常在菌)でもあるので、免疫力が低下した際に悪さをして症状が出る場合が多いです。基本的には、腟に入れる錠剤やクリームで治療します。
なるほど。おりものに異変が出るのは、さまざまな理由が考えられるのですね。
そうですね。性感染症の病原体の種類としては、ほかにもHIVや腟トリコモナス、マイコプラズマなど、多岐に渡ります。今回ご紹介したクラミジアや淋菌のように、性感染症の中には、将来不妊の原因になるものもあるというのは、知識としてぜひ知っておいていただきたいと思っています。
平塚先生、ありがとうございました!
まとめ
この記事では、平塚先生に「性感染症(性病)」ついてお話いただきました。 ポイントをまとめると下記の通りです。
- 「性感染症(性病)」とは、性行為で感染する病気のこと。
- 「梅毒」は症状が出るまで時間がかかり、感染に気付かないまま何年もかけて皮膚や血管などに進行することもある。
- 「クラミジア」と「淋菌」は “不妊症” の原因になることもある。
- 性感染症に感染するとおりものに変化が出たり、生理痛のような痛みがみられる場合も。
- 性交渉の際にはコンドームを使用することが予防になる。
性感染症の中には将来的に不妊の原因になるものもあります。コンドームを正しく使用し、感染を防ぎましょう。
日本専門医機構認定産婦人科専門医
2018年3月 東京大学医学部医学科 卒業
2022年4月 帝京大学医学部附属溝口病院 産婦人科