「フェムテックではたらく女性を支援したい」経済産業省にインタビューしました。
まずは川村さんの自己紹介をお願いします。
はじめまして、経済産業省の川 村と申します。2020年11⽉から経済産業省の経済社会政策室で室⻑を務めています。プライベートでは⼤学⽣の娘と、⾼校⽣の息⼦を持つ⼆児の⺟です。
所属する経済社会政策室はどのようなことを⾏っているのでしょうか?
端的にいうと ”ダイバーシティ経営” を推進している部署です。男⼥問わず誰もが⾃分の価値観にそった多様な働き⽅が認められ、生き生きと活躍することで、 それが企業の成長、そして日本経済の成長につながっていくよう環境整備を推進しています。特に⼥性はキャリアとライフプランの両⽴が難しいという現状があります。生理、不妊治療をはじめとする妊娠・出産関連、そして更年期まで⼥性特有の健康課題を解決し、望まない離職・転職をなくしたいとの思いで、昨年度からフェムテック企業を対象とした補助⾦事業を⾏っています。
この事業を進めていてどのような変化がありましたか?
フェムテックという言葉をよく聞くようになりましたし、男⼥問わず⼥性の健康課題についての関心が少しずつ高まっているように感じます。昨年度の実証事業の中で、ある参加事業者が⼥性の健康課題に関する啓蒙パンフレットを作成したのですが、それを省内の希望者に配布したところ好評でした。また、男性職員からも「パートナーのためにぜひほしい」との声もあり、嬉しく感じました。
この事業の⽴ち上げのきっかけは何だったのでしょうか?
フェムテック事業の発案者は、ある女性職員です。自身の経験から、女性特有の健康課題を抱えながらも誰にも言えずに個人的な問題だと我慢しながら働いている女性が相当いるのではないかと感じたとのこと。そしていろいろと調べていくうちに、個人の問題として片付けるには大きな課題で、社会としてしっかり考えていくべきなのではないか、と感じたことが立ち上げのきっかけですね。
すばらしい立ち上げのストーリーですね。実際、ライフイベントとキャリアの両立が困難な女性は多いのでしょうか?
そうですね。2018年に行われた調査では、多くの女性が生理や月経前症候群(PMS)により仕事のパフォーマンス低下を経験しているという結果も出ています。
また不妊治療では、頻繁に、そして急遽病院に⾏かなければならないことから、仕事の予定が立てにくいと感じている方が多いです。「職場に迷惑をかけるので仕事を続けられない…」と思ってしまう気持ちも理解できますし、職場に相談できないまま「仕事と不妊治療のどちらかを断念しなきゃ…」と追 い込まれてしまう気持ちもわかります。また、⽣理痛にも⼈によって症状や程度が異なり、業務に⽀障をきたす⽅もいらっしゃいますよね。
川村さんご自身はライフイベントとキャリアの両立は難しく感じましたか?
今思い返すと、子育てで忙しかった時期の記憶があまりないんです。とにかく日々の火の粉を振り払うのに精一杯だったことは覚えています。また、子供の体調不良や保育園行事で仕事を 休むことも多かったので、当時は自分の体調不良では仕事を休めない、という意識が強かったですね。辛くても我慢することが当たり前、という状態でした。
ご自身の身近な方にも健康課題を抱えている方はいらっしゃいますか?
生理痛が重い方や妊活中の⽅など、みなさんさまざまな悩みを抱えていますよね。相手から相談してくれたときは、⾟いときは無理をしないように伝えています。⼈⽣においても大切なことなので、優先してもらいたいですね。それに、私も体調不良のときは助けてもらうのですからお互いさまです。私⾃⾝も⼦育て時代はい ろいろな方に助けてもらいましたので、今の若い⽅には「我慢をしないで」と伝えたいですね。
女性が抱える健康課題に関して、どのように対策していくとよいと思われますか?
まずは自分の身体を知ること、正しい知識を身につけておくことが大切ですね。たとえば、生理日を管理していれば、周期が不規則といった事実から何か問題がある可能性に気づけますし、周期から気分の浮き沈みをしやすい時期もある程度把握できたりしますよね。変わったことがあったときにすぐに気付けること、正しい知識に基づいて「これってもしかして…」と考えら れることは、病気の早期発見にも繋がります。
川村さんご自身は、何か気をつけていることはありますか?
職場の同僚や先輩、後輩など身近な方に「元気?体調はどう?」と気軽に尋ねるようにしています。そうすると中には「最近実はこんな症状があって…」と話してくれる方もいます。女性の健康課題に関する話題は、きっかけがないと話しにくいことが多いので、きっかけを自分から作るようにしています。体調が悪そうな方には病院に行ってみることを勧めています。問題がなければ安心できますし、もし問題があった場合は早めに対処できます よね。これは私自身も心がけていることです。
すてきな心がけですね!川村さんは、これからどんな世の中になってほしいと思っていますか?
女性の健康課題に関して、周りのサポートが必要な方が気軽に相談できて、それが不利にはたらくことなく、正しく対応される社会になってほしいと考えています。女性の健康課題は女性だけではなく、男性も当事者意識を持って一緒に解決していくことが必要です。男性側にも「気になっているが話題にしづらい…」と感じている方も多くいらっしゃいます。必要のある方同士が男女の垣根なく、適切にコミュ ニケーションを取れるようにすることで、誰もが生き生きと活躍できる世の中にしていきたいですね。
本日はありがとうございました!