更年期障害による関節痛・手足のしびれの原因と対処方法。リウマチとの違いは?
何歳から「更年期」?
そもそも “更年期” とは具体的に何歳ごろのことなのでしょうか?
“更年期” とは “閉経前後の5年間” のことです。つまり合わせて10年程度が更年期にあたります。閉経年齢は人によって異なりますが、日本人の平均閉経年齢は約50歳ですので、40代後半からが更年期に当たる方が多くなります。
更年期障害とは
そうなんですね。では “更年期障害” とはどのようなものなのでしょうか?
まず “更年期症状” は、更年期において病気など身体に根本的な異常がないのにも関わらず起こる、多種多様な症状のことをいいます。この更年期症状のうち、日常生活に支障をきたす症状を “更年期障害” と呼んでいます。
更年期の「関節の痛み」や「手足のしびれ」の原因
なるほど。更年期障害の症状として関節の痛みや、手足のしびれを訴える方が多いと思いますが、どうしてこのような症状がおこるのでしょうか?
まずは、加齢によって関節を支えている軟骨や筋肉が衰えることが原因として挙げられます。そして、更年期に入り女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少することで血液循環が悪くなってしまうこと、肌の老化によって皮膚が薄くなると外界から神経が刺激されやすくなることも原因です。
関節がなめらかに痛みなく動くには、軟骨と滑膜が正常にはたらく必要があります。身体の組織をなめらかに保つ作用を持つエストロゲンが更年期に減少することで、滑膜にも影響が出て、関節が傷んでくるという仕組みです。さらにエストロゲンには滑膜の浮腫(むくみ)を取る作用もあるので、その作用が衰えることで何度も浮腫を繰り返し、関節が腫れたり変形してしまうことも少なくありません。
痛みが起こりやすい部位
そのような仕組みで痛むのですね。ちなみに痛みが起こりやすい部位はどこなのでしょうか?
手の痛みが多いようです。ただ、手は普段の生活でもよく使う部位なので、何か支障があると生活の質に直結します。そのため、手に痛みがある患者さんには、手を専門に扱う外科をご紹介して詳しい検査をおすすめしています。
「リウマチ」との違い
似たような症状で「リウマチ」があると思いますが、更年期症状 の関節痛とは違いがあるのでしょうか?
似たような症例ですが、分類が細かいため明確にはリウマチと更年期症状の関節痛は異なるものです。たとえば、リウマチだと痛まない部位が更年期症状では痛むこともあります。更年期の女性はリウマチも起こりやすい年代です。実際に、リウマチと関節炎と更年期症状が混ざり合って痛んでいる、という症例もあります。
関節痛やしびれの治療方法
なるほど。関節が痛む場合、どのように対処すればよいのでしょうか?
一番効果がある治療法はホルモン補充療法ですね。注射や飲み薬や貼り薬、ジェル状のタイプもあるので、患者さんに合わせて処方しています。
ホルモン補充療法では、どのような頻度で治療するのでしょうか?
注射の場合は月1回です。貼り薬の場合は週2回ご自身で貼り替えをお願いしています。貼り薬の場合はどこに貼っても効果は変わらないのですが、こすれにくかったり、目立ちにくいという理由からお腹に貼るのがおすすめです。
セルフケアでの対処法
なるほど。ちなみにセルフケアでの対処法はありますか?
セルフケアでは、血行をよくすることが大切です。適度な全身運動や半身浴、マッサージなどがおすすめです。また、骨を丈夫にするビタミンDと、血行を良くするビタミンEを積極的に摂取するとよいでしょう。
そうなんですね。宮田先生、教えていただきありがとうございま した!
まとめ
この記事では、宮田先生に「更年期の関節痛」についてお話いただきました。 ポイントをまとめると下記の通りです。
- 関節の痛みや、手足のしびれは更年期症状のひとつ。
- 加齢によって関節を支えている軟骨や筋肉が衰えることが原因のひとつ。
- 更年期で女性ホルモンの分泌が減少することで血液循環が悪くなってしまうこと、肌の老化によって皮膚が薄くなると外界から神経が刺激されやすくなることも原因。
- 手の関節の痛みを訴える方が多い。
- リウマチとは似て非なるものだが、リウマチも更年期に発症しやすいため、リウマチと関節炎と更年期症状が混ざり合って痛んでいる場合も多い。
- 更年期症状の関節痛にはホルモン補充療法が効果的。注射や飲み薬や貼り薬、ジェル状のタイプなどがある。
- 適度な全身運動や半身浴、マッサージなどで血行をよくすることも症状改善につながる。
更年期の関節痛は女性ホルモンの量が減るこ とや皮膚が薄くなることから引き起こされます。症状が重い場合には婦人科に相談し、ホルモン補充療法での治療を検討しましょう。