「痩せ」は妊娠・出産にどう影響するの?“適正体重” ってどのぐらい?
20代以下の女性の5人に1人が “痩せ”
現代は、20代以下の女性の5人に1人が “痩せ” と聞いたことがあるのですが、本当でしょうか?
本当です。また、厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、20〜30代の世代においては、男性の平均体重は増え続けている一方で、女性の平均体重は戦後よりも軽いという調査結果もあります。これは日本特有の現象です。私は大学の学校医もやっているのですが、実際に痩せている女性が多いように感じます。
日本の女性の体重が低下している原因
何が原因で日本の女性の体重が低下しているのでしょうか?
諸説ありますが、よく言われるのはモデルさんやアイドルなどに影響を受け「肥満は悪」「痩せている方が美しい」という価値観が社会的に定着していることが挙げられます。また、20代女性の平均食事摂取量の調査によると、通常1日あたり1,950Kcalが必要なところ1,650Kcalぐらいしか摂取していないというデータもあります。つまり、活動量が多いから痩せているというより、食べる量が少ないから痩せている傾向があるようです。
たしかにSNSやテレビ、雑誌などで見る、モデルさんや女優さんなど芸能人は痩せている方が多いですね。憧れる気持ちもわかります…。
もちろん太り過ぎは健康に悪いですが、必要のないダイエットや少食すぎることは不健康な “痩せ” に繋がるので気をつけていただきたいです。
BMIの計算方法
健康的な体重 (適正体 重) はどうやったらわかるのでしょうか?
適正体重は「BMI(Body Mass Index)」の計算式から割り出せます。計算式は「BMI = 体重 (kg) ÷ 身長 (m) ÷ 身長 (m)」です。18.5未満が「低体重 (やせ) 」、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上が「肥満」とされています。
「痩せ」が妊娠や出産に与える影響
そうなのですね。「痩せ」は妊娠や出産にどのように影響するのでしょうか?
痩せすぎている場合は女性ホルモンの分泌が減り、生理が止まることがあります。生理が止まると排卵がなくなり妊娠しづらくなりますし、骨の代謝を調節するはたらきを持つ “女性ホルモン” の分泌が減り、骨が弱くなります。
骨が弱くなると妊娠・出産にどのような問題があるのでしょうか?
女性は妊娠中や授乳中に赤ちゃんにカルシウムを与えるため、一時的に骨密度が減少します。そういったとき、もともと骨が弱いと骨粗しょう症による骨折のリスクも高まってしまいます。妊娠時に備えて骨密度を維持しておくことが大切です。
「太り過ぎ」が妊娠や出産に与える影響
なるほど。太り過ぎの場合は妊娠や出産にどのような影響がありますか?
太り過ぎの場合には、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクが高まります。このような状態だと、赤ちゃんの健康に影響を及ぼすことがあります。また、血圧が高く危険な場合にはお母さんの命を守るために、予定よりも早く赤ちゃんを出してあげなくてはいけないということもあります。
「痩せ」の傾向がある場合の対策は?
BMIが低すぎたり「痩せ」の傾向があったりする場合、どのように改善していけば良いのでしょうか?
まずはバランスのよい食事から、必要な栄養素をしっかりと摂取し適度に運動を取り入れましょう。痩せている方にとって体重を増やすことは、太っている方のダイエットと同じように苦労があると思います。ファストフードで手っ取り早く体重を増やすと生活習慣病になる可能性もあるため、普段の食事にプラスして間食に栄養バーを取り入れるなど、気軽なものから意識して栄養を摂ってみてはいかがでしょうか?
鈴木先生、ありがとうございました!
まとめ
この記事では、鈴木先生に「“痩せ” が妊娠・出産に与える影響」についてお話しいただきました。ポイントをまとめると下記の通りです。
- 現在の日本では、20代以下の女性の5人に1人が “痩せ” に分類される。20〜30代の世代においては、男性の平均体重は増え続けている一方で、女性の平均体重は戦後よりも軽いという調査結果もある。
- 活動量が多いから痩せているのではなく、食べる量が少ないから痩せている傾向がある。
- 適正体重は「BMI(Body Mass Index)」の計算式から割り出せる。計算式は「BMI = 体重 (kg) ÷ 身長 (m) ÷ 身長 (m)」で、18.5未満が「低体重 (やせ) 」、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上が「肥満」とされている。
- 痩せすぎている場合は、女性ホルモンの分泌が減り、生理が止まることがある。生理が止まると排卵がなくなり妊娠しづらくなるほか、骨密度が減少し骨折のリスクも高まる。
- 太り過ぎの場合には、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクが高まる。
- “痩せ” の傾向がある場合、バランスのよい食事から必要な栄養素をしっかりと摂取し、適度に運動を取り入れることが大切。
「痩せている方が美しい」という価値観が社会的に定着しているいま、痩せすぎの女性も多いようです。将来の妊娠に向けて、お母さんや赤ちゃんの命を守るためにも、若いころから栄養をしっかりと摂取し、健康な体づくりを行いましょう。
1996年3月浜松医科大学卒業
1996年5月浜松医科大学医学部付属病院産婦人科
その後、大学関連病院勤務を経て
2003年3月浜松医科大学大学院修了
2003年4月米国カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部がんセンター
2006年4月聖隷健康診断センター
2010年4月聖隷健康サポートセンターShizuoka 所長 現在に至る
2016年4月静岡県立大学客員教授