「プレコンセプションケア」とは?妊娠に備えて今できること
プレコンセプションケアとは?
「プレコンセプションケア」とは何でしょうか?
プレコンセプションケアとは大まかにいうと “妊娠前のケア” のこと。英語で “Conception” は「妊娠」や「受胎」の意味を、“pre” は「〜の前の」という意味を持ちます。妊娠ができる年齢の女性や、妊娠に関わる男性パートナーといった若い世代が、将来の妊娠に備えて自分たちの健康に向き合うことを「プレコンセプションケア」と呼んでいます。
「プレコンセプションケア」が注目されている理由
なぜ今プレコンセプションケアが注目されているのでしょうか?
近年は晩婚化が進み、不妊や少子化が進んでいることが原因にあると考えています。晩婚化が進んだことから高齢出産が増え、ハイリスク妊娠と呼ばれる方が多くいらっしゃいます。
なるほど。たしかに高齢出産は増えているように感じます。
はい。日本の産科医療は発展しており、妊婦や乳児の死亡率は改善しているものの、赤ちゃんの先天的な異常や低出生体重児の数、母親の病態あるいは母親の妊娠合併症による影響が原因となる周産期死亡(満22週~生後1週以内の赤ちゃんの死亡)の割合などは、減少していない現状があります。赤ちゃんの約10%が低出生体重、約6%が早産、約2〜3%が先天的異常を持って生まれています。そこで、妊娠前からご自分やパートナーの健康状態を振り返り、ケアをしていく必要性があるというのが「プレコンセプションケア」の考え方です。
女性だけではなく男性もプレコンセプションケアを意識した方がよいのでしょうか?
そうですね。男女ともに妊娠や健康について正しい知識を持ち、女性だけではなく男性も妊娠に向けて健康状態を見直していくことが大切です。
妊娠に向けて気をつけたい病気は?
妊娠に向けて、女性が気をつけたほうがよい病気はありますか?
風疹やはしか (麻疹)、性感染症や子宮頸がん、などの婦人科系の病気に気をつけていただきたいです。風疹は妊娠中に感染すると赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があり、先天性心疾患、難聴、白内障などの原因になったり、はしかは妊娠中に感染すると早産や流産、低出生体重児のリスクを高めたりするため注意が必要です。また、過度のストレスもホルモンバランスを乱し、月経不順を起こす原因になります。リフレッシュする時間も大切にしてください。
同じく妊娠に向けて、男性が気をつけるべき病気はありますか?
女性と同じく風疹やはしか、性感染症に注意が必要です。これは男女ともに言えることですが、風疹やはしかの抗体がない場合にはワクチンの接種をおすすめします。また、男性の場合、過度の喫煙や飲酒、ストレスは精子の質を低下させるので注意しましょう。
妊娠に向けて摂っておきたい栄養素は?
プレコンセプションケアにおすすめの栄養素はありますか?
まずはバランスのよい食事を摂ることが大切です。その上で女性には妊娠前から「葉酸」を十分に摂っていただきたいです。葉酸は卵黄やブロッコリー、いちごなどに含まれる栄養素ですが、食事から十分な量を摂取するのは難しいためサプリメントの活用もおすすめです。1日あたり0.4mgを目標に摂取しましょう。
葉酸が不足しているとどのようなリスクがあるのでしょうか?
葉酸は、胎児の細胞の増殖や成長のためにとても大切な栄養素です。不足すると赤ちゃんの神経管がうまく形成されず神経管閉鎖障害という先天異常が起こりやすくなってしまいます。
なるほど、妊娠前からしっかりと栄養素を摂取して、妊娠に備えておくことが大切ですね。鈴木先生、ありがとうございました!
まとめ
この記事では、鈴木先生に「プレコンセプションケア」についてお話しいただきました。ポイントをまとめると下記の通りです。
- 「プレコンセプションケア」とは、大まかにいうと “妊娠前のケア” のこと。妊娠ができる年齢の女性や、妊娠に関わる男性パートナーといった若い世代が、将来の妊娠に備えて自分たちの健康に向き合うことを言う。
- 「プレコンセプションケア」は、現在の晩婚化に伴う高齢出産や不妊、少子化が進んでいることから注目されている。
- 男女ともに妊娠や健康について正しい知識を持ち、女性だけではなく男性も妊娠に向けて健康状態を見直していくことが大切。
- 妊娠に向けて、男女共に風疹やはしか、性感染症、また、男性は過度な喫煙や飲酒などの生活習慣の乱れに特に注意する。
- 胎児の細胞の増殖や成長のために必要な「葉酸」は、妊娠前から摂取して妊娠に備えておくのが望ましい。
食生活や生活習慣を整え、正しい知識を持って病気を予防することなど、男女共に妊娠に備えてできることはたくさんあります。ご自身やパートナーの生活を振り返り、改善できることから取り組んでみましょう。
1996年3月浜松医科大学卒業
1996年5月浜松医科大学医学部付属病院産婦人科
その後、大学関連病院勤務を経て
2003年3月浜松医科大学大学院修了
2003年4月米国カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部がんセンター
2006年4月聖隷健康診断センター
2010年4月聖隷健康サポートセンターShizuoka 所長 現在に至る
2016年4月静岡県立大学客員教授